睡眠時無呼吸症候群について

 健康に被害を及ぼす睡眠時無呼吸症候群と習慣性いびき

いびきは睡眠障害や呼吸障害のサイン

「いびきをかいてよくよく眠っている」と云われますが、実はいびきをかいているときは余りよく眠れていない事が多いのです。脳波を分析すると、いびきをかいている時は睡眠が浅く、体の疲れがとれるような深い睡眠は得られていません。おまけにいびきをかく男性の30%、女性の20%は病的な睡眠時無呼吸をもっています。いびきは舌や咽頭の筋肉の緊張がとれて、空気の通りが狭くなって発生しますが、咽頭が完全に塞がってしまうと無呼吸になる(窒息状態になる)という訳です。そして、睡眠時無呼吸が原因になっていろいろな病的な病状が出現するようになった状態を睡眠時無呼吸症候群と言います。

 

予想外に多い睡眠時無呼吸症候群

 このような睡眠時無呼吸症候群をもつ人は非常に多く、米国で行われた大規模な調査によると、少なく見積もっても成人男性(30歳~60歳)の4%、女性の2%に達すると云われています。原因の大部分は下顎が小さかったり、舌や軟口蓋(咽頭の奥の肉ひだ)が大きいといった顔つきの特徴と肥満です。

 

睡眠時無呼吸症候群の寿命は短い

 1時間当たりの無呼吸(10秒以上の呼吸停止)が20回以上に達するような中等症~重症になると寿命が短くなり、7~8年後には20%~30%の人が死亡すると報告されています。その死亡原因の多くは、心筋梗塞や脳梗塞です。詳しく調べると、心筋梗塞を起こした人の30%、糖尿病の30%に睡眠時無呼吸がみつかり、これらの生活習慣病を悪化させたり、その原因の一部になったりしているものと考えられています。

 

睡眠時無呼吸症候群の治療

PSG検査の結果に基づき、以下に示すような治療法からそれぞれの患者様に最も適した方法を選択します。

●CPAP(シーパップ)・BiPAP(バイパップ)
 
鼻マスクを着けて咽頭に空気を送り込む方法で、最も確実な治療方法。
●歯科装具(マウスピース)
 
夜寝るときにマウスピースを着けて咽頭が塞がらないようにする方法で、軽症の人に使用。
●耳鼻科的手術
 
腫大した扁桃腺や軟口蓋を手術で切り取る。
●対処治療
 
横向きに寝る、アルコールを控える、太っていれば減量するなど。
●薬物療法
 
現在ではあまり行われていません。
●在宅酸素療法

 

診断は終夜睡眠ポリグラフ検査

 この病気を正しく診断するためには終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査が必要です。PSG検査は睡眠(脳波、眼動、体位、脚動)、呼吸(口、鼻呼吸、胸呼吸、腹呼吸)、心拍数、血液の酸素飽和度などを一晩に渡りモニターして、睡眠障害や呼吸障害の有無と程度を診断する方法です。この検査は健康保険適応になっているにも関わらず、検査をする側の(診療側)時間や労力の負担が大きいため、日本ではごく限られた施設でしか行われていません。現在のところ佐賀県下でPSG検査を施行している病院・施設は当院を含め2~3施設しかありません。

 

睡眠ポリグラフィー検査のながれ

【夕方に入院】(検査についての説明をします。)

※あなたの睡眠中に、いびきや呼吸など連続的に記録します。
※頭、目、鼻、胸、腹、足、指などに電極やバンドなどを付けて、寝ていただきます。痛みはありません。不安に思われるかもしれませんが、実際はほとんどの方が寝ておられます。朝目覚められたら電極やバンドを取り外します。

【翌朝に退院】
 
自宅へ、そのまま会社へ。

 

 

≪睡眠時無呼吸症候群の自己診断テスト≫

下記の項目に「はい」、「いいえ」で答えて下さい。

    「ほとんど毎晩いびきをかく」と、家族や周囲の人に、いわれる。
    「睡眠中に呼吸が止まる」と、家族や周囲の人に、いわれる。
    「日中に眠気が強く、目を覚ましているのがつらいことが多い。
    肥満している。
    体がだるい。
    寝汗をかくことが多い。
    朝、目を覚ましたときにスッキリしない(熟睡感がない)。
    夜中に2回以上排尿におきる。
    しばしば、首を絞められたような窒息感で目覚める。
    血圧が高い。

※3つ以上「はい」と答えた人は、(閉塞性)睡眠時無呼吸症候群の可能性が強いので、終夜睡眠ポリグラフ検査を受けることをお勧めします。ご相談ください。

※受診には、他の医療機関からの紹介による他、当院に直接お越しいただくか、電話で申し込む事もできます。受診希望の方は、内科外来でご相談ください。(検査は要予約。)